未経験からドローン警備の仕事に就く手順|「スクールより先に、警備員になれるかを確認する」3ステップ

未経験からドローン警備を目指すとき、最初にやるべきことはドローンスクールへの申し込みではありません。先に確認すべきは、(1)自分が警備業法上の警備員になれるか、(2)応募先が屋内を飛ぶのか屋外を飛ぶのか、の2点です。この2点が決まらないうちに技能証明を取ると、取った資格が応募先の業務で使われないという事態が起こり得ます。
理由は制度の作りにあります。ドローン警備は「航空法」と「警備業法」という2つの別の法律が重なる領域で、必要な資格を決めているのは主に警備業法の側なのに、検索で出てくる情報は航空法(国家資格)の話に偏りがちだからです。
この記事では、警備業法・同施行規則の条文と、警察庁・国土交通省の公表資料をもとに、遠回りしない順番で3ステップに整理します。
なぜ「資格から始める」と遠回りになるのか(3つの理由)
- 理由①:屋内だけを飛ぶ運用なら、航空法の飛行ルールは適用されない。 国土交通省の資料は、屋内として整理された空間等において飛行させる場合、飛行禁止空域や飛行の方法に関する航空法のルールは適用されないとしています。倉庫・工場内・ネットで囲われた区画を巡回する運用であれば、技能証明の有無が業務上の必須条件にならない場合があります。
- 理由②:警備員になれるかどうかには法律上の要件があり、資格では埋められない。 警備業法第14条は、18歳未満の者および同法第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者は警備員となってはならないと定め、警備業者がそうした者を警備業務に従事させることも禁じています。ここに該当すると、技能証明を持っていても警備員として働くことはできません。
- 理由③:必要な知識と技能は、入社後の法定教育で担保される設計になっている。 警備業法第21条第2項と同法施行規則第38条により、新たに警備業務に従事させる警備員には基本教育と業務別教育を合わせて原則20時間以上、現に従事させている警備員には毎年度原則10時間以上の教育を行うことが会社の義務です。未経験者が入社前に自力で埋める前提の制度ではありません。
言い換えると、ドローン警備における「未経験可」は建前ではなく、法定教育で立ち上げる前提で設計されているために成立しているということです。
出典:警備業法/警備業法施行規則/国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」
ドローン警備の仕事に就く3ステップ
ステップ1:警備員になれるかを先に確認する(費用ゼロ・所要1日)
最初にやるのは、警備業法上の要件を自分に当てはめる確認作業です。ここが通らなければ、以降のステップはすべて意味を失います。
確認するのは次の点です。
| 確認項目 | 根拠条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 年齢 | 警備業法第14条第1項 | 18歳未満の者は警備員になれない |
| 破産手続 | 同法第3条第1号 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者は該当 |
| 刑罰歴 | 同法第3条第2号 | 拘禁刑以上の刑、または同法違反による罰金の刑の執行終了等から5年を経過しない者は該当 |
| 重大な不正行為 | 同法第3条第3号 | 最近5年間に同法等の規定に違反する重大な不正行為をした者は該当 |
| 薬物・アルコール | 同法第3条第6号 | アルコール、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤の中毒者は該当 |
| 心身の障害 | 同法第3条第7号 | 警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるものは該当 |
このステップで確認しておくと後が楽になることとして、応募時には身分証明書や住民票、誓約書などの提出を求められる場合があります。書類の準備に時間がかかることもあるため、応募と並行して早めに揃えておくと選考が止まりません。
ステップ2:「屋内か屋外か」「夜間があるか」で応募先を絞る(費用ゼロ・所要数日)
ここがドローン警備特有の分岐です。同じ「ドローン警備」でも、飛ばす場所と時間帯で必要な手続きがまったく変わります。
| 飛ばす条件 | 航空法上の扱い | 未経験者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 屋内として整理された空間のみ | 飛行禁止空域・飛行の方法のルールは適用されない | 技能証明が業務上の必須条件にならない場合がある。入りやすい |
| 屋外・昼間・目視内・人や物件から30m以上 | 特定飛行に該当しない(カテゴリーI) | 航空法上の許可・承認手続は不要 |
| 屋外・夜間、または目視外、または人や物件から30m未満 | 飛行の方法の制限にあたり、承認が必要 | 承認申請の実務、または機体認証+技能証明が必要になる |
| 飛行経路下に第三者の立入りを制限しない | カテゴリーIII飛行 | 一等技能証明と第一種機体認証が前提となる領域 |
国土交通省は、夜間飛行、目視外飛行、人または物件から30m以上の距離を確保できない飛行を原則禁止とし、行う場合は承認を受ける必要があるとしています。また、機体認証および操縦者技能証明により、飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行うカテゴリーII飛行のうち一部の飛行許可・承認手続が不要になる場合があるとしています。
警備は夜間が主戦場になりやすい業務です。 そのため、屋外の夜間巡回を含む求人では、機体認証と技能証明を前提とした運用が組まれていることがあります。逆に、屋内の施設巡回に限る求人であれば、航空法の話は入口では出てきません。
求人票の「勤務地」「勤務時間」から、どちらに当たるのかを先に見極めてください。判断がつかない場合は、応募時の質問として「飛行させる場所は屋内か屋外か」「夜間の飛行があるか」を確認するのが確実です。
ステップ3:応募し、入社後の法定教育と並行して資格を積み上げる(所要3か月〜)
ステップ2で応募先の条件が分かったら、資格取得を待たずに応募します。理由は、必要な教育が会社の義務として先に来るからです。
入社後に受ける法定教育は次の構成です。
| 教育の種類 | 対象 | 時間数(原則) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 新任教育(基本教育+業務別教育) | 新たに警備業務に従事させる警備員 | 20時間以上 | 施行規則第38条第4項 |
| 新任教育(業務別教育のみ) | 検定合格証明書の交付を受けており、その種別以外の警備業務に従事させる者 | 10時間以上 | 同項 |
| 現任教育(基本教育+業務別教育) | 現に警備業務に従事させている警備員 | 毎年度10時間以上 | 施行規則第38条第5項 |
※上記は代表的な区分です。警察官としての勤務歴が通算1年以上ある場合や、最近3年間に同じ区分の警備業務に従事した期間が通算1年以上ある場合などは、時間数が軽減される区分が別に定められています。
そのうえで、入社後に積み上げる価値が高い資格は次の2系統です。
1. 警備業法側の資格:警備員検定(警察庁の統計では空港・施設・雑踏・交通・貴重品・核燃料物質等の種別で運用されています)。施設警備業務検定は、施設警備の現場で配置要件がある場合に必要になります。令和7年12月末現在、施設の1級検定保有者は12,347人、2級は51,397人です。検定は学科試験と実技試験で判定されますが、国家公安委員会の登録を受けた者が行う講習会の課程を修了した場合、試験の全部または一部が免除されることがあります(同法第23条)。 2. 航空法側の資格:無人航空機操縦者技能証明(一等・二等)。有効期間は3年で、更新申請は有効期間満了日の6か月前から1か月前までに行う必要があります。屋外・夜間の運用がある職場では、機体認証とあわせて運用コストを下げられる人材として評価されやすいと考えられます。
なお、より長い時間軸でキャリアを積む方向を考えるなら、未経験からドローン業界でキャリアを始める方法|最初の3年で何を積むかを決める3ステップも参考になります。
出典:国土交通省「無人航空機操縦者技能証明等」/警察庁「令和7年における警備業の概況」
未経験・独学で不安な場合の選択肢
選択肢A:施設警備から入り、社内でドローン運用に移る
もっとも現実的な経路です。警備業法第2条第1項第1号の警備業務(施設警備)に警備員として入り、法定教育を受けながら現場を覚え、ドローンや機械警備の運用側に移っていく形です。
この経路が現実的な理由は、ドローン運用側の層がまだ薄いことにあります。警察庁「令和7年における警備業の概況」によれば、令和7年12月末現在で1号警備業務を行う警備業者は6,975業者(全体の63.7%)ある一方、機械警備業者は512業者にとどまり、前年より30業者(5.9%)減少しています。入口の数と運用側の数に大きな差があるため、外から直接運用側に入るより、内側から移るほうが道が通っていることが多いという構造です。
選択肢B:機械警備の基地局・指令側を目標に置く
ドローンやセンサーが検知した情報を、施設の外にある拠点で受けて判断する側の仕事です。警備業法第42条は、機械警備業者に対し基地局ごとに機械警備業務管理者を選任することを義務づけており、同法施行規則第60条は原則として基地局ごとの専任を求めています。
この資格の保有者は多くありません。令和7年12月末現在、機械警備業務管理者資格者証を保有する警備員は8,076人で、令和7年中の交付は266件です。警備員として現場を知ったうえでこの資格に進む道は、人数の少なさから見て希少性が高いと考えられます。
選択肢C:ドローンの実務を別分野で先に作る
警備に限らず、点検や測量でドローンの実務経験を先に作り、あとから警備に移る経路もあります。点検分野の進め方は未経験からドローン点検に転職する手順|「資格から始める」で遠回りしないための3ステップで整理しています。
ただし注意点があります。警備業務は「他人の需要に応じて」「盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務」を行うものと定義されており(同法第2条第1項第1号)、これを行うには同法第4条の公安委員会の認定が必要です。個人で受託する形で警戒・防止まで担うことはできない点は押さえておく必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q. ドローンスクールに通わないと採用されませんか
屋内のみの運用であれば、航空法の飛行ルール自体が適用されないため、スクール修了が採用の前提にならない場合があります。屋外・夜間の運用がある求人では評価されやすくなりますが、先に確認すべきは応募先の飛行条件です。条件が分からないままスクールを選ぶと、必要のない限定変更に費用をかけることになりかねません。
Q. 何歳からでも始められますか
警備業法第14条により18歳未満は警備員になれませんが、上限年齢の定めはありません。実態としても年齢層は幅広く、警察庁「令和7年における警備業の概況」によれば、令和7年12月末現在の警備員59万6,985人のうち70歳以上が129,012人(21.6%)、65〜69歳が78,496人(13.1%)、60〜64歳が75,001人(12.6%)を占めています。一方で30歳未満は65,028人(10.9%)、30〜39歳は52,968人(8.9%)にとどまります。若年層が薄い業界であり、年齢を理由に入口が閉じている構造にはなっていません。
Q. 入社してすぐドローンを飛ばせますか
多くの場合は難しいと考えられます。法定教育を先に受ける必要があり、また警備業法第15条は、警備業者および警備員が警備業務を行うにあたり、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意し、他人の権利および自由を侵害してはならないと定めています。カメラを搭載した機体を飛ばす業務は、この原則の運用ルールを理解したうえで担当することになるため、段階を踏む職場が一般的です。
Q. 夜勤は避けられますか
求人によります。ドローン警備が導入される背景には、夜間の巡回を人が担うことの負担があります。警察庁「省力化投資促進プラン ―警備業―」は、警備業務は危険と隣り合わせであり、毎年30名程度の警備員が不慮の事故により殉職している(令和6年は28名)と記載しています。ドローン導入は夜間巡回を置き換える方向で進むため、「ドローンがあるから夜勤がない」とは限らず、むしろ夜間の遠隔監視側に人が必要になるケースもあります。応募時に勤務シフトを確認してください。
Q. 資格を取る費用は会社が出してくれますか
警備員教育は警備業法上の会社の義務ですが、航空法上の技能証明は個人の資格であり、費用負担の扱いは各社の方針によります。技能証明は3年ごとの更新があるため、取得費用だけでなく更新費用の扱いまで確認しておくと、実質的な条件を比較できます。
まとめ
未経験からドローン警備を目指す手順は、次の順番で進めるのが遠回りになりません。
1. 警備員になれるかを確認する(警備業法第14条・第3条の要件。費用ゼロ) 2. 屋内か屋外か、夜間があるかで応募先を絞る(ここで必要な航空法上の手続きが決まる) 3. 応募し、入社後の法定教育(新任20時間以上・現任毎年度10時間以上)と並行して資格を積む
順番を逆にして資格から入ると、応募先の運用条件に合わない資格に費用と時間をかける可能性があります。ドローン警備は、必要な知識と技能を入社後の法定教育で立ち上げる前提で制度が組まれているため、「先に資格を揃えてから応募する」必要性は、思われているほど高くありません。
とはいえ、自分の職歴と働き方の制約を踏まえて屋内系と屋外系のどちらを狙うべきかは、一人で判断しにくいところです。まだ転職を決めていない段階でも構いません。情報交換だけでもお役に立てることがありますので、気になった時点で気軽にご相談ください。
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著者:ドロテン運営事務局(ドローン業界特化の転職・副業紹介サービス「ドロテン」の編集チーム)
本記事の制度・統計に関する記述は、警備業法・警備業法施行規則、警察庁「令和7年における警備業の概況」および「省力化投資促進プラン ―警備業―」、国土交通省の無人航空機に関する公表資料を確認して記載しています。制度は改正されることがあるため、実際の手続きにあたっては必ず最新の一次情報をご確認ください。


