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ドローン警備に資格は必要?「必要」と「不要」が混在する3つの理由を航空法と警備業法から切り分ける

「ドローン警備に資格は必要か」を調べると、「国家資格が必須」と書かれた記事と「資格なしでもできる」と書かれた記事が同時に出てきます。どちらも間違いではありません。ドローン警備で必要になる資格は航空法側と警備業法側の2階建てになっており、どちらの階の話をしているかで答えが変わるからです。

結論を先に書きます。

  • 航空法側:屋内として整理された空間のみを飛ばすなら、飛行禁止空域・飛行の方法に関する航空法のルールは適用されません。屋外でも昼間・目視内・人や物件から30m以上を確保するなら、許可・承認手続は不要です。この範囲では技能証明は法律上の必須要件ではありません。
  • 警備業法側:他人の需要に応じて警戒・防止を行う業務である以上、警備員になるための要件(18歳以上・欠格要件非該当)と、会社による法定教育の履修は避けられません。 現場によっては警備員検定の合格証明書、機械警備であれば機械警備業務管理者資格者証が制度上必要になります。

つまり「必須の国家資格」として真っ先に来るのは、多くの人が想像する無人航空機操縦者技能証明ではなく、警備業法側の要件です。この記事では、情報が混在する3つの理由を条文レベルで切り分けます。

情報が混在する3つの原因

原因①:航空法の適用範囲が「屋内かどうか」で切れている

これが最大の原因です。

国土交通省の資料は、飛行の許可・承認を受ける必要がある場合の手続きを説明したうえで、屋内として整理された空間等において飛行させる場合は、これらのルールは適用されないと明記しています。飛行禁止空域についても、屋内で飛行させる場合は許可が不要であるとしています。

警備の現場は屋内が少なくありません。倉庫、工場の建屋内、商業施設の内部、ネットで囲われた区画などが対象です。この条件で運用している会社にとっては「航空法上の資格は不要」が正しく、屋外を夜間に飛ぶ会社にとっては「資格または承認が必要」が正しいという状態になります。同じ「ドローン警備」という言葉でも、前提が違うのです。

出典:国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」

原因②:航空法のなかでも「飛行の方法」の制限で必要性が変わる

屋外を飛ぶ場合も、一律に資格が必要になるわけではありません。国土交通省は、原則として禁止される飛行の方法として、夜間飛行、目視外飛行、人または物件から30m以上の距離を確保できない飛行を挙げ、これらを行う場合には承認を受ける必要があるとしています。

そして飛行はカテゴリーで区分されています。

区分 内容 ドローン警備での典型例
カテゴリーI 特定飛行に該当しない飛行。航空法上の飛行許可・承認手続きは不要 屋外の敷地内を昼間・目視内で、人や物件から30m以上離して巡回
カテゴリーII 飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行う特定飛行 立入りを制限した敷地内で夜間・目視外の巡回を行う
カテゴリーIII 飛行経路下において立入管理措置を講じないで行う飛行 第三者が立ち入る区域の上空を飛ぶ運用

国土交通省は、機体認証および操縦者技能証明により、カテゴリーII飛行のうち一部の飛行許可・承認手続が不要になる場合があるとしています。逆に言えば、技能証明がなくても承認を受ければ夜間飛行は可能であり、技能証明は「それがないと飛べない資格」ではなく「手続きを省ける資格」として機能する場面が多いということです。

なお、カテゴリーIII飛行は一等技能証明と第一種機体認証が前提となる領域ですが、国土交通省が公表する型式認証取得機の一覧では、令和8年6月19日現在、第一種型式認証を受けた型式は1型式(ACSL式PF2-CAT3型)にとどまります。警備の現場でカテゴリーIII飛行が一般的な選択肢になっている段階ではない、と考えられます。

出典:国土交通省「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法」

原因③:警備業法側の要件が、記事によって触れられていない

ここが抜け落ちると「資格なしでできる」という説明だけが残ります。しかしドローン警備は、他人の需要に応じて行う警戒・防止の業務です。

警備業法第2条第1項第1号は、警備業務の一つを「事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(警備業務対象施設)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務」であって、他人の需要に応じて行うものと定義しています。これを営業として行うには、同法第4条により都道府県公安委員会の認定が必要です(認定の有効期間は5年)。

そして警備員として働く側には次の要件がかかります。

項目 根拠 内容
警備員の制限 第14条 18歳未満の者、第3条第1号から第7号までに該当する者は警備員になれない
教育義務 第21条第2項・施行規則第38条 新任は基本教育+業務別教育あわせて原則20時間以上、現任は毎年度原則10時間以上
警備員検定 第23条 警備業務の種別ごとに、学科試験と実技試験により知識・能力を判定。登録講習会の修了で試験の全部または一部が免除される場合がある
実施の基本原則 第15条 この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意し、他人の権利および自由を侵害してはならない

第15条は、カメラを搭載した機体を飛ばすドローン警備では実務上重い条文です。 撮影範囲や記録の扱いは、この原則の枠内で運用ルールを作る必要があります。

出典:警備業法/警備業法施行規則

機械警備にあたる場合は、もう一段要件が増える

ドローン警備でとくに見落とされやすいのが、機械警備業務の扱いです。

警備業法第2条第5項は「機械警備業務」を、警備業務用機械装置を使用して行う1号警備業務と定義しています。ここでいう警備業務用機械装置とは、「警備業務対象施設に設置する機器により感知した盗難等の事故の発生に関する情報を当該警備業務対象施設以外の施設に設置する機器に送信し、及び受信するための装置」です。さらに同法施行規則第2条は、この装置を「電話その他送信者の音声を送信し、及び受信するための装置以外の装置」としています。

ドローンやカメラが検知した情報を、施設の外にある拠点へ送って警戒する運用は、この定義に沿って機械警備業務として整理されるのが自然と考えられます。その場合、事業者側に次の義務が生じます。

項目 根拠 内容
届出 第40条 基地局または送信機器を設置する警備業務対象施設の所在する都道府県ごとに、公安委員会へ届出
機械警備業務管理者 第42条・施行規則第60条 基地局ごとに選任。原則は専任(対象施設の合計が5,000以下で公安委員会の承認を受けた場合など例外あり)
即応体制の整備 第43条 情報を受信した場合に速やかに現場確認等ができるよう、必要な数の警備員・待機所・車両その他の装備を適正に配置
書類の備付け 第44条 基地局ごとに、待機所ごとの配置警備員の氏名、警備業務対象施設の名称・所在地等を記載した書類を備える

機械警備業務管理者の業務は施行規則第61条に列挙されており、警備業務用機械装置の運用計画の作成と監督、指令業務の基準作成と統制、警察機関への連絡に関する指導などが含まれます。

この資格の保有者は多くありません。 警察庁「令和7年における警備業の概況」によれば、令和7年12月末現在で機械警備業務管理者資格者証を保有する警備員は8,076人、令和7年中の交付は266件です。「ドローン警備に必要な資格」を求人側の視点で見たとき、もっとも不足しているのは技能証明ではなくこちらだと考えられます。

改善のためのチェックリスト

自分に必要な資格を特定するには、次の順に確認してください。

  • [ ] 応募先で飛ばすのは屋内か屋外か(屋内のみなら航空法の飛行ルールは適用されない)
  • [ ] 屋外の場合、夜間・目視外・人や物件から30m未満のいずれかに該当するか(該当すれば承認、または機体認証+技能証明が選択肢になる)
  • [ ] 飛行経路下の第三者の立入りを制限できるか(できなければカテゴリーIII飛行の領域)
  • [ ] 自分が警備業法第14条・第3条の要件を満たしているか(18歳以上、欠格要件非該当)
  • [ ] 配属先の現場に警備員検定の配置要件があるか(施設警備業務検定など)
  • [ ] 検知情報を施設外の拠点へ送る運用か(該当すれば機械警備業務として追加要件がかかる)
  • [ ] 技能証明の取得費用と3年ごとの更新費用を会社が負担するか

このうち上から3つは応募先に聞けば分かります。下の4つは自分で確認できます。この7項目が埋まれば、「自分に必要な資格」は一通りに決まります。

なお、求人がどの立場のものかを先に特定したい場合はドローン警備の転職先はどう比較する?「警備業法のどの立場で関わるか」で5つの入口に分ける選び方をご覧ください。仕事内容そのものはドローン警備の仕事とは?年収や必要資格を徹底解説で整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 結局、ドローン警備に国家資格は必須ですか

「無人航空機操縦者技能証明が必須」とは言えません。 屋内のみの運用では航空法の飛行ルール自体が適用されず、屋外でも昼間・目視内・人や物件から30m以上を確保する範囲であれば許可・承認手続は不要です。夜間・目視外などを行う場合も、承認を受けるという選択肢があります。ただし警備員として働くには、警備業法第14条の要件を満たし、会社による法定教育を受けることが必要です。必須なのは警備業法側の要件だとお考えください。

Q. 二等無人航空機操縦士があると何が変わりますか

機体認証とあわせることで、飛行経路下に立入管理措置を講じたうえで行うカテゴリーII飛行の一部について、飛行ごとの許可・承認手続が不要になる場合があります。承認申請は飛行の10開庁日前までに行う必要があるため、夜間巡回のように運用頻度が高い業務では、手続きを省ける点が実務上の価値になります。 屋内のみの運用では、この価値は発生しません。

Q. 警備員検定は取っておいたほうがよいですか

配属先によります。警備業法第23条の検定は警備業務の種別ごとに行われ、警察庁の統計では空港・施設・雑踏・交通・貴重品・核燃料物質等の種別で運用されています。施設警備の現場で配置要件がある場合は必要になります。令和7年12月末現在、施設の検定合格証明書の保有者は1級12,347人、2級51,397人で、級別・種別を問わず何らかの検定合格証明書を保有している警備員は161,019人です。警備員59万6,985人に対して約27%という水準であり、保有していることが差になる余地はあります。

Q. 資格がない状態で応募しても大丈夫ですか

制度上は問題ありません。警備業法は、必要な知識と技能を入社後の教育で担保する設計になっています。新たに警備業務に従事させる警備員には基本教育と業務別教育をあわせて原則20時間以上、現に従事させている警備員には毎年度原則10時間以上の教育を行うことが会社の義務です。なお、警察官としての勤務歴が通算1年以上ある場合などは時間数が軽減される区分が定められています。

Q. 自衛隊駐屯地や原子力施設の警備に関わる場合、追加の制約はありますか

あります。警察庁によれば、小型無人機等飛行禁止法の対象施設には、国の重要な施設等、対象防衛関係施設(自衛隊施設・在日米軍施設)、対象空港、対象原子力事業所などが含まれ、対象施設とその周辺地域の上空での飛行が原則禁止されています。例外として、対象施設の管理者またはその同意を得た者による飛行、土地所有者等またはその同意を得た者による当該土地上空の飛行、国または地方公共団体の業務実施のために行う飛行が位置づけられています。この種の案件では、資格の話より先に誰の同意を得た飛行なのかという整理が必要になります。

出典:警察庁「小型無人機等飛行禁止法関係」

まとめ

「ドローン警備に資格は必要か」への答えが混在するのは、3つの切れ目があるからです。

1. 屋内か屋外か — 屋内として整理された空間のみなら、航空法の飛行禁止空域・飛行の方法のルールは適用されない 2. 飛行の方法 — 夜間・目視外・30m未満に該当するかで、承認または機体認証+技能証明が要否の分かれ目になる 3. 警備業法側の要件 — 18歳以上・欠格要件非該当・法定教育は避けられず、現場によって警備員検定、機械警備なら機械警備業務管理者が制度上必要になる

多くの記事が1と2だけを扱い、3に触れないため「資格不要」という印象が残ります。実務では3が先に来ます。そのうえで1と2を確認すれば、自分に必要な資格は一通りに決まります。

とはいえ、応募前に飛行条件まで読み取るのは簡単ではありません。求人票を見ながら「この会社はどの階の資格を求めているのか」を一緒に整理することもできます。転職を決めていない段階でも構いませんので、気になった時点でお気軽にお声がけください。

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著者:ドロテン運営事務局(ドローン業界特化の転職・副業紹介サービス「ドロテン」の編集チーム)

本記事の制度・統計に関する記述は、警備業法・警備業法施行規則、警察庁「令和7年における警備業の概況」、国土交通省の無人航空機に関する公表資料および型式認証取得機一覧、警察庁「小型無人機等飛行禁止法関係」を確認して記載しています。制度は改正されることがあるため、実際の手続きにあたっては必ず最新の一次情報をご確認ください。

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