一等無人航空機操縦士の取得手順|「スクールを探す」より先に決めるべき3つのこと

一等無人航空機操縦士を取ろうと決めたとき、多くの方が最初にすることはスクール(登録講習機関)の検索です。しかし、そこから始めると費用が確定しないまま走り出すことになりがちです。
理由は、一等の取得コストが「等級」ではなく機体の区分と限定の組み合わせで変わるからです。回転翼マルチローターか飛行機か、25kg未満の限定を外すのか、目視内・日中の限定解除を同時に取るのか。ここを決めていないと、見積もりも受験計画も立ちません。
この記事では、国土交通省と指定試験機関(一般財団法人日本海事協会)が公表している情報をもとに、一等の取得を3ステップ+費用の全体像で整理します。すでに二等をお持ちの方にも使える順番です。
なぜ一等の取得で遠回りしやすいのか
つまずきの原因は、だいたい次の3つに集約されます。
- 試験の順序を一本道だと思い込んでいる:実際には学科試験と身体検査は講習の前に受けることもでき、順序に自由度があります
- 実地試験を必ず受けるものだと思っている:登録講習機関で所定の講習を修了すると実地試験が免除されるため、ルートが2通りあります
- 「一等を取れば終わり」だと思っている:目視内飛行の限定が残っていると、レベル3/3.5飛行の操縦者要件を満たしません。等級とは別に限定解除が必要です
3つ目は特に見落とされます。国土交通省航空局のレベル3.5飛行に関する資料では、操縦者要件について「一等/二等の種別は問いません」とした上で、「飛行させる無人航空機の種類、重量に対応したものであって、目視内飛行の限定解除を受けたものであることが必要」と明記されています。
ステップ1:取得前に決める3つのこと
決め事①:どの機体区分で取るか
技能証明は機体の種類ごとに取得します。指定試験機関が公表している実地試験の区分は、回転翼航空機(マルチローター)/回転翼航空機(ヘリコプター)/飛行機の3つです。手数料もこの区分で異なります。
業務でマルチローターを使う前提であれば、回転翼(マルチローター)を選ぶのが一般的です。目的の業務に使う機体に合わせて選んでください。
決め事②:25kg未満の限定を外すか
技能証明には最大離陸重量25kg未満の限定が付きます。農薬散布機や大型の物流機を扱うなら、この限定を外す必要があります。
ただし注意点があります。25kg以上の機体については、技能証明を持っていても個別の許可・承認が常に必要です。さらに身体検査の基準も変わります。指定試験機関の公表内容では、身体基準が「一等25kg未満限定及び二等」と「一等25kg以上」で分けられており、一等25kg以上は無人航空機操縦者技能証明における身体検査実施要領によるものとされ、診断書は指定航空身体検査医による作成が推奨されています。
先に扱う機体の重量を確認してから決めてください。
決め事③:目視内・日中の限定解除を同時に取るか
繰り返しになりますが、ここが実務上いちばん効きます。
| 限定 | 外すと何ができるか | 業務上の意味 |
|---|---|---|
| 目視内飛行の限定 | 目視外飛行 | レベル3/3.5飛行の操縦者要件。物流・インフラ点検で必須 |
| 日中飛行の限定 | 夜間飛行 | 夜間の点検・撮影・警備業務 |
| 25kg未満の限定 | 25kg以上の機体 | 大型散布機・大型物流機(ただし個別の許可・承認が必要) |
一等を取っても目視内の限定が残っていればレベル3.5の要件を満たしません。取得計画の段階で限定解除まで含めて見積もるのが、後からの追加費用を避けるコツです。
分野ごとにどの限定が必要になるかは一等無人航空機操縦士の転職先はどう比較する?「一等が必須になる飛行」から7分野を逆算して選ぶで整理しています。
ステップ2:試験を受ける(2つのルートから選ぶ)
受験資格の確認
まず年齢要件です。国土交通省のドローン情報基盤システム(DIPS2.0)の案内では「16歳未満の方は取得することはできません」とされています。16歳以上であることが前提です。
試験全体の流れ
指定試験機関が公表している流れは次のとおりです。順序に自由度があるのがポイントです。
1. 試験申込システムでの利用者登録(登録講習機関の講習受講前に実施可能) 2. 学科試験・身体検査(講習前に実施することも可能) 3. 登録講習機関での講習受講(所定の講習を修了すると実地試験が免除される) 4. 実地試験(講習を修了していない人のみ受験) 5. 技能証明申請(DIPS2.0に申請)
ここから分かるのは、ルートが2つあることです。
| ルート | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ①登録講習機関ルート | スクールで講習を受け、修了審査に合格して実地試験を免除。学科試験は別途受験 | 実機の操縦経験が少ない方、業務水準の飛行を体系的に学びたい方 |
| ②直接受験ルート | 指定試験機関で学科試験・実地試験・身体検査をすべて受験 | すでに十分な操縦経験があり、実地試験に対応できる方 |
学科試験の内容
指定試験機関によると、一等の学科試験は三肢択一式70問・試験時間75分で、合格には90%程度の正答率が必要とされています(二等は50問・30分で80%程度)。CBT(Computer Based Testing)方式で実施されます。
試験科目は、無人航空機関連規則/無人航空機システム/操縦者及び運航体制/運航上のリスク管理の4科目で、一等ではカテゴリーⅢ飛行や飛行性能の基本的な計算を含む、より詳細な内容が出題されるとされています。
合格証明番号の有効期限は、合格の正式な通知日から起算して2年間です。学科に合格してから実地や申請を後回しにしすぎると失効する可能性があるため、スケジュールを先に組んでおいてください。
身体検査の受検方法
指定試験機関が示している受検方法は3通りです。
| 方法 | 内容 | 有効期間 |
|---|---|---|
| 有効な公的証明書の提出 | 自動車運転免許証など指定の公的証明書 | 合格日から1年、または証明書の有効期間のいずれか短い方 |
| 医療機関の診断書提出 | 一等25kg未満限定及び二等向けの様式/一等25kg以上向けの様式(指定航空身体検査医が推奨) | 合格日から1年 |
| 指定試験機関での会場受検 | 会場で検査を受ける | 合格日から1年 |
一等25kg未満限定及び二等の身体基準は、視力が両眼0.7以上・各眼0.3以上、色覚が赤・青・黄の識別可能、聴力が後方2メートルの距離から発せられた通常の強さの会話の音声が正しく聞き取れること、そのほか安全な飛行に必要な能力を有することとされています。
費用面では、書類受検が5,200円、会場受検が19,900円と公表されています。公的証明書で足りるなら書類受検を選ぶだけで約1.5万円の差が出ます。
ステップ3:技能証明を申請して交付を受ける
申請の手続き
国土交通省の案内では、申請手続きに技能証明申請者番号の取得、登録講習機関での講習受講、指定試験機関での試験受験(学科・実地・身体検査)が必要とされています。申請は原則オンライン(DIPS2.0)で行い、該当する手数料を納付します。
DIPS2.0の案内では、申請時に技能証明合格証明書(電子ファイル)が必須の添付書類として挙げられています。
納めるお金は2種類ある
ここが混乱しやすい点です。試験手数料とは別に、交付手数料と登録免許税があります。
| 項目 | 一等 | 二等 |
|---|---|---|
| 技能証明書 新規申請の交付手数料 | 3,000円 | 3,000円 |
| 限定変更・再交付・更新申請の交付手数料 | 各2,850円 | 各2,850円 |
| 登録免許税 | 3,000円 | なし |
登録免許税については、DIPS2.0の案内で「登録免許税額は3,000円となります。(一等無人航空機操縦士のみ)」と明記されています。二等にはかかりません。
取得後:有効期限は3年
国土交通省は技能証明の有効期限を3年としており、更新は有効期間満了日の6か月前から1か月前までに申請が必要とされています。登録更新講習機関による更新講習制度も設けられています。更新申請の交付手数料は2,850円です。
更新時期を逃すと再取得の手間が発生する可能性があるため、交付時点でカレンダーに入れておくことをおすすめします。
【表】一等取得にかかる費用の全体像
指定試験機関と国土交通省が公表している実費を、回転翼(マルチローター)で一等を取る場合の例としてまとめます。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 学科試験(一等) | 9,900円 | CBT方式・70問・75分 |
| 実地試験(回転翼マルチローター/基本) | 22,200円 | 登録講習機関の修了で免除可 |
| 実地試験(限定変更) | 20,800円 | 限定解除を追加する場合 |
| 身体検査(書類受検) | 5,200円 | 公的証明書または診断書 |
| 身体検査(会場受検を選ぶ場合) | 19,900円 | 書類受検との差は14,700円 |
| 技能証明書 新規申請の交付手数料 | 3,000円 | DIPS2.0で納付 |
| 登録免許税(一等のみ) | 3,000円 | 二等は不要 |
| 登録講習機関の受講料 | 公表価格なし | 機関ごとに設定。要問い合わせ |
登録講習機関ルートを選ぶ場合の受講料は、国土交通省も「講習日程・料金は各機関に問い合わせが必要」としており、公的に統一された金額はありません。必ず受講を検討している機関に直接確認してください。 ネット上の「相場」情報は機関・コース・限定解除の有無で大きく変わるため、鵜呑みにしないことをおすすめします。
なお、登録講習機関の数は国土交通省の資料によると令和6年9月30日時点で555件・749スクールです。選択肢は十分にあります。
未経験・独学で不安な場合の選択肢
選択肢①:先に二等を取り、限定解除で実務要件を満たす
一等の学科試験は合格基準90%程度、実地試験も負荷が高くなります。志望業務がカテゴリーⅢ飛行(レベル4)を含まないのであれば、二等+目視内飛行の限定解除で要件を満たせる領域が広く存在します。
実際、国土交通省航空局のレベル3.5飛行の資料では操縦者要件について「一等/二等の種別は問いません」とされています。費用と時間を考えると、まず二等で実務に入り、必要が生じたときに一等へ進むルートは現実的です。
選択肢②:勤務先・応募先の資格取得支援を使う
自己負担で取得してから転職するより、資格取得支援のある企業に入ってから取る方が、金銭的な負担は小さくなります。求人票に「資格取得支援あり」「国家資格取得費用会社負担」の記載があるかを先に確認する価値があります。
選択肢③:取得前に「どの飛行をする仕事か」を確定させる
一等を取っても、第一種機体認証を受けた機体がなければレベル4飛行はできません。国土交通省の資料では、第一種機体認証は令和6年9月30日時点で4件、第一種型式認証は1件とされています。
志望先がカテゴリーⅢ飛行を実施しているかを確認してから投資判断をする方が、回収の見通しが立ちます。制度と求人の関係は2026年のドローン国家資格 求人トレンド|「民間資格の省略措置が消えた」ことが求人要件を変えたにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q. 二等を持っていると一等は取りやすくなりますか?
A. 制度上、二等の保有が一等の学科試験や実地試験を免除するわけではありません。ただし指定試験機関は「すでに技能証明を保有する申請者向け」の手続きルートを用意しています。実務面では、二等の学習範囲と重なる部分があるため、学習の負荷は軽くなると考えられます。
Q. 実地試験は必ず受けなければなりませんか?
A. いいえ。指定試験機関の案内では、登録講習機関で所定の講習を修了すると実地試験が免除されるとされています。実地試験を受験するのは講習を修了していない方のみです。
Q. 学科試験と講習はどちらを先にするべきですか?
A. どちらでも構いません。指定試験機関の流れでは、学科試験・身体検査は講習前に実施することも可能とされています。ただし学科の合格証明番号の有効期限は合格の正式な通知日から2年間なので、講習・実地・申請を2年以内に終える計画にしてください。
Q. 身体検査は運転免許証で済みますか?
A. 一等25kg未満限定および二等については、有効な公的証明書(自動車運転免許証など指定のもの)の提出による受検方法が用意されています。一等で25kg以上の限定変更を受ける場合は、身体検査実施要領による基準となり、診断書は指定航空身体検査医による作成が推奨されています。ご自身の取得区分に応じて確認してください。
Q. 取得にどれくらいの期間がかかりますか?
A. 公的に定められた標準期間はありません。登録講習機関のコース期間、学科試験の予約状況、申請の審査期間によって変わります。申請に必要な手数料と登録免許税の納付、技能証明合格証明書の提出が揃ってからの交付になるため、スケジュールは受講予定の機関と試験申込システムの空き状況で確認してください。
Q. 一等を取れば就職・転職が決まりますか?
A. 資格だけでは決まらないと考えています。国土交通省も技能証明の取得は「無人航空機の飛行において必須事項ではありません」としており、採用側は業務領域の経験や安全管理の能力もあわせて見ています。資格取得後に何をすれば接続するかはドローン国家資格を取った後に転職が決まる人は何をしているのか|制度から逆算できる4つの再現ステップで整理しています。
まとめ
一等の取得は、スクール検索から始めるのではなく、次の順番で進めるのが効率的です。
1. 機体区分(マルチローター/ヘリコプター/飛行機)を決める 2. 25kg未満の限定を外すかを、扱う機体の重量から決める 3. 目視内・日中の限定解除を同時に取るかを、志望業務の飛行形態から決める 4. 登録講習機関ルートか直接受験ルートかを選ぶ(講習修了で実地試験は免除) 5. 学科試験・身体検査は講習前でも可。学科合格証明番号は2年で失効する点に注意 6. DIPS2.0で申請し、交付手数料3,000円と登録免許税3,000円(一等のみ)を納付 7. 有効期限は3年。更新は満了日の6か月前〜1か月前に申請
なお、志望業務がカテゴリーⅢ飛行を含まない場合は、二等+目視内飛行の限定解除で要件を満たせることが多くあります。費用も試験負荷も小さくない選択なので、「本当に一等が必要な仕事なのか」を先に確かめる価値があります。
どの等級・どの限定が必要かは、志望する分野と事業者の飛行形態で変わります。資格を取るかどうかの前段階でも構いません。まずは情報交換だけでも、お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら
- 転職・副業の相談(無料):https://lp.drone-tenshoku.com/
- ドローン業界の求人を見る:https://drone-tenshoku.com/jobs/
著者情報
ドロテン運営事務局(ドローン業界特化の転職・副業紹介サービス「ドロテン」の編集チーム)
参考・出典
- 国土交通省「無人航空機操縦者技能証明制度」https://www.mlit.go.jp/koku/license.html
- 国土交通省「無人航空機操縦者技能証明書の交付手数料額」https://www.mlit.go.jp/koku/content/001572203.pdf
- 国土交通省 ドローン情報基盤システム2.0「技能証明申請に関するよくある質問」https://www.uapc.dips.mlit.go.jp/contents/lic/question_LCA.html
- 国土交通省 航空局 無人航空機安全課「カテゴリーⅡ飛行(レベル3.5飛行)の許可・承認申請について」(令和6年2月)https://www.mlit.go.jp/koku/content/001725836.pdf
- 国土交通省「次世代航空モビリティに関する検討状況について」https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001767892.pdf
- 無人航空機操縦士試験(指定試験機関:一般財団法人日本海事協会)「概要」https://ua-remote-pilot-exam.com/guide/overview/
- 無人航空機操縦士試験「学科試験」https://ua-remote-pilot-exam.com/guide/written-examination/
- 無人航空機操縦士試験「身体検査」https://ua-remote-pilot-exam.com/guide/physical-exam/
- 無人航空機操縦士試験「技能証明試験の種別・手数料」https://ua-remote-pilot-exam.com/certificate/


