ドローン整備士に資格は必要?「必要ない」と「必要」が混在する3つの理由を制度から整理する

ドローン整備そのものを行うために必須となる国家資格は、2026年9月時点で存在しません。 一方で「資格が必要」という情報も広く流通しています。この食い違いは情報の誤りではなく、「整備作業に必要な資格」と「整備を仕事にするうえで実質的に求められるもの」が混同されているために起きています。
この記事では、なぜ答えがぶれるのかを3つの原因に分解し、自分のケースでは何を取るべきかを判断できるチェックリストまで落とし込みます。
前提:ドローンの国家資格は「操縦」の資格である
まず制度の位置づけを確定させます。
無人航空機操縦者技能証明とは、無人航空機を飛行させるために必要な知識および能力を国が証明する制度を意味します。 2022年12月5日から施行され、これを取得した人は一等無人航空機操縦士または二等無人航空機操縦士と呼ばれます(国土交通省「無人航空機操縦者技能証明等」)。
ここで重要なのは、この制度が対象にしているのは操縦であって、整備ではないという点です。航空機の世界には航空整備士という国家資格がありますが、無人航空機には対応する整備資格が用意されていません。
では整備は誰の責任なのか。航空法は、機体認証を受けた無人航空機の使用者に対して、必要な整備を行うことで安全基準への適合を維持する義務を課しています。責任は「資格を持った整備士個人」ではなく「機体の使用者」に置かれている、というのが制度の骨格です。
「資格が必要か」の答えがぶれる3つの原因
原因①:制度が求めているのは資格ではなく「整備手順書どおりの作業」だから
整備に資格要件がない代わりに、制度は作業の内容を縛っています。
型式認証を取得した機体について、国土交通省は「整備手順書に従った点検整備や機体メーカーが指定する部品交換以外の作業を実施した場合、機体認証申請時は型式認証未取得の機体として取り扱う」としています(国土交通省「機体認証等」)。
これは実務上かなり重い制約です。資格の有無に関係なく、手順書を外れた整備をした瞬間に、その機体は型式認証の恩恵(機体認証検査の全部または一部の省略)を失うことになります。
つまり求められているのは「資格を持つ人が整備すること」ではなく「手順書どおりに整備されていること」です。ここが「資格は不要」という説明の根拠になっています。
原因②:整備の成果が「飛行日誌」に残る運用になっているから
一方で「記録を書けないと仕事にならない」という現実があり、これが「資格や知識が必要」という感覚を生みます。
特定飛行を行う場合、飛行日誌(飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3つ)の作成・携行・保管が義務づけられています(国土交通省「飛行計画の通報・飛行日誌の作成」)。日常点検は飛行前の実施が必要で、点検整備は安全基準への適合義務を履行した際に記載します。
整備職の成果物は、直したという事実ではなく記録です。 記録に何を書くかを理解していない人は、資格があってもこの業務を担えません。逆に、記録運用を理解していれば資格がなくても担えます。「必要なのは資格ではなく制度理解」という構図がここにあります。
原因③:整備後の動作確認で機体を飛ばすため、操縦資格の話が混ざるから
3つめの原因が、実務上いちばん混同されやすい点です。
航空法は、飛行させる者に対して「飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させること」を遵守事項として定めています。整備後のテストフライトや動作確認飛行は、この飛行前確認と一体の行為です。
そして、飛行させる場所や方法が特定飛行に該当する場合、操縦する人には技能証明や許可・承認の要件がかかります。「整備に資格は不要」だが「整備後に自分で確認飛行をするなら操縦側の要件がかかる」——この二段構造が、検索結果で「必要」「不要」が入り混じる最大の理由です。
資格なしでできる範囲とできない範囲の切り分けは、ドローンパイロットへの転職は資格なしでも可能?できる仕事とできない仕事を航空法から切り分けるで詳しく解説しています。
【比較表】何が「必須」で、何が「実質的に有利」なのか
| 項目 | 制度上の必須性 | 実務での位置づけ |
|---|---|---|
| 整備専用の国家資格 | 制度として存在しない | — |
| 無人航空機操縦者技能証明(一等・二等) | 整備作業には不要 | 整備後の確認飛行を自分で完結させたい場合に有利 |
| 整備手順書に沿った作業 | 型式認証機では実質的に必須 | 外れると型式認証未取得機として扱われる |
| 飛行日誌(点検整備記録)の記載 | 特定飛行では作成・携行・保管が義務 | 整備職の主要な成果物 |
| 民間団体の整備系講習 | 不要 | 特定機種・特定分野の知識補完 |
| 他分野の整備系国家資格(自動車整備士等) | 不要 | 手順遵守と記録の経験として評価され得る |
※上表は制度上の要件と実務上の位置づけを整理したもので、個別企業の応募要件を示すものではありません。
自分に資格が必要かを判断するチェックリスト
以下のうち当てはまる項目が多いほど、操縦資格(まずは二等無人航空機操縦士)の取得価値が高くなります。
- [ ] 整備後の動作確認やテストフライトを自分で行う可能性がある
- [ ] 応募先が小規模で、整備と操縦が分業されていない
- [ ] 運航事業者の社内整備(自社機の機体管理)を志望している
- [ ] 農業ドローン分野を志望しており、散布オペレーターも兼ねる可能性がある
- [ ] 整備の実務経験がなく、書類選考で示せる客観的な材料が乏しい
逆に、以下に当てはまる場合は資格取得より制度理解と手順遵守の実績を優先するほうが合理的と考えられます。
- [ ] 修理センター型(送られてきた機体を工場内で診断・修理)を志望している
- [ ] すでに自動車整備・設備保全・電気工事などで点検と記録の実務経験がある
- [ ] メーカーの品質保証・サービスエンジニアを志望しており、電気・機械の実務経験がある
整備職の求人タイプごとの違いはドローン整備士の求人はどう比較する?「誰の機体を整備するか」で5タイプに分けて選ぶ基準で整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 「ドローン整備士」という資格は存在しないのですか?
国家資格としては存在しません。民間資格については、創設の発表はあったものの現在の実施状況が確認できませんでした。 一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)は2017年10月に「ドローン整備士2級」および「ドローン車検(安全整備検査)スタンダード」の創設を発表しています。ただし2026年9月時点でDPAの資格認定事業ページに掲載されているのは操縦士回転翼のスペシャリスト・エキスパート・インストラクターの3種で、整備士資格の掲載は確認できませんでした。受講を検討する場合は主催団体へ直接お問い合わせください。
Q. 機体認証の検査は整備士がやるのですか?
いいえ、検査主体は国または登録検査機関です。 第一種機体認証は国土交通省が検査して有効期間1年、第二種機体認証は登録検査機関が検査して有効期間3年とされています(国土交通省 無人航空機レベル4飛行ポータルサイト「機体認証」)。第二種機体認証の検査は日本海事協会(ClassNK)のような登録検査機関が担っています。整備担当が行うのは、認証を受けた機体を基準に適合した状態で維持するための日常の点検整備です。
Q. 二等無人航空機操縦士を取れば整備の仕事に就けますか?
資格だけでは決まりません。 二等は操縦の技能証明であり、整備の能力を証明するものではありません。整備職の応募で効くのは「整備後の確認飛行まで自分で完結できる」という補完的な価値です。取得した理由を整備目的として説明できるかどうかで、評価のされ方が変わります。
Q. 自動車整備士の資格は使えますか?
そのまま代替はできませんが、評価される可能性は高いと考えられます。 ドローン整備に固有の国家資格がない以上、「機械を手順書どおりに整備し、記録を残した経験」が実質的な裏付けになります。制度上の同等性はないため、資格名を挙げるだけでなく、点検項目の管理や記録運用の経験として翻訳して伝えてください。
Q. 資格がないまま整備の仕事を続けてキャリアになりますか?
なり得ると考えられます。 持ち運べる資産になるのは、特定の機種を直せることよりも、整備手順書に沿った点検と点検整備記録の運用を回した経験です。機体が世代交代しても、この運用能力は残ります。ドローン業界全体のキャリアの伸ばし方はドローン業界で将来性が高い職種7選|市場データと国の政策から需要の裏付けを比較も参考にしてください。
まとめ
「ドローン整備士に資格は必要か」への答えは、対象を分ければはっきりします。
- 整備作業そのものに必須の国家資格はない(整備は使用者の義務として制度化されている)
- 制度が求めているのは資格ではなく整備手順書どおりの作業と点検整備記録
- 整備後に自分で確認飛行をするなら、操縦側(技能証明・許可承認)の要件がかかる——ここが「必要」説の根拠
判断に迷ったら、上のチェックリストで「自分が機体を飛ばす立場になるか」を確認してください。飛ばすなら二等の取得価値が上がり、飛ばさないなら制度理解と手順遵守の実績を優先する、という切り分けになります。
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「自分の場合は資格を取るべきか」「手持ちの整備経験がどう評価されるか」は、志望するタイプによって変わります。判断に迷う段階でも、まずは情報交換だけでもお気軽にご相談ください。
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この記事の執筆者 ドロテン運営事務局(ドローン業界特化の転職・副業紹介サービス「ドロテン」の編集チーム)
参考・出典


