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「ドローン災害調査の転職成功事例」が見つからない理由|公表された自治体の記録から必要な職能を書き起こす

「ドローン災害調査 転職成功事例」で検索しても、具体的な体験談はほとんど出てきません。理由は2つあります。

ひとつは、災害調査が「災害調査職」として採用される仕事ではないこと。平時に点検・測量・空撮などを担う組織が、災害時に協定や依頼に基づいて動くのが基本形です。もうひとつは、災害対応の記録は個人の転職話ではなく、自治体や事業者の活動記録として公表されることです。

そこでこの記事では、架空の体験談を作る代わりに、公的機関が実名で公表している災害時の活動記録とインタビューから、実務で何が求められたのかを書き起こします。主に北海道が令和7年(2025年)4月に公表した「災害時ドローン活用ハンドブック」に収録された記録を使います。

災害調査に人が関わり始める背景(一般的な傾向)

まず前提となる動きを、公表資料で確認しておきます。

消防庁が令和4年2月の「消防の動き」で公表した調査(令和3年6月1日時点)によると、ドローンを活用している消防本部は383本部で、活用率は52.9%でした。推移は平成29年70本部(9.6%)、平成30年116本部(15.9%)、令和元年201本部(27.7%)、令和2年309本部(42.6%)と、継続して増加しています。

同調査で、活用実績のある288本部が挙げた課題のうち最も回答数が多かったのは「操縦者の育成や運用体制上の人員不足」で59本部でした。機体性能の不足(18本部)や安全面の課題(13本部)を上回っています。

つまり機材より人が足りない、という構図が公表データに表れています。これが、災害調査に人が関わる入口が生まれている背景だと考えられます。

公表記録から読む「実際に踏まれたステップ」

ケース1:自治体職員が自分たちで飛ぶ体制をつくる(栃木県さくら市)

北海道のハンドブックには、さくら市が職員からの公募により分野横断的な独立チーム「さくら市ドローン活用チーム」を発足させた事例が収録されています。同市財政課デジタル戦略室の坂巻氏のコメントとして、次の内容が記録されています。

  • シティプロモーション等でドローンを活用した経験があったが、都度民間事業者へ委託するとコストを賄うのが難しいと感じた。職員自ら運用することでコストの抑制を図るとともに、防災を中心とした市民サービス向上に寄与できると考えて活用を検討した
  • 職員で構成されたドローン活用チームを立ち上げ、連携協定を締結している民間事業者の力を借りて、様々な課から14名をドローン操縦者として育成した
  • 組織横断的に操縦者を設けることで、人事異動があっても対応ができること、平時から原課の事業への活用も進められることを狙っている
  • 人口5万人規模の自治体であれば、組織横断的な体制は取りやすいと考えている

課題としては、どこまでを職員で飛行し、どこから民間事業者に頼るべきかの判断基準づくり、そして災害時に原課の職務・消防団の役割・ドローン活用チームの役割のどれを優先するかの整理が挙げられています。

ここから読める職能:平時の原課業務と並行してドローンを担える汎用性。特定部署の専任ではなく、組織横断で動ける立ち回り。

ケース2:民間事業者が協定で実働部隊になる(大分県)

同ハンドブックには、2023年3月9日に大分県と大分県ドローン協議会が「災害時におけるドローンによる緊急被災状況調査に関する協定」を締結し、2023年6月1日から活動を開始した事例が収録されています。協定締結の前段として、2022年度に大分県と協議会会員が連携し、実災害でのドローン調査の実証を実施して有効性を確認したうえで締結に至った、という段取りも記録されています。

大分県商工観光労働部新産業振興室の山﨑氏のコメントとして、連携協定の工夫が3点挙げられています。

1. 県ドローン協議会の発足により協力事業者を可視化できていたこと 2. 防災局予算を活用し有償対応のスキームを用意したこと 3. 民間事業者への依頼に関する庁内の指揮命令系統を整理していたこと

さらに、民間事業者側に自治体が求めるデータを理解してもらうため、協議会の防災減災分科会で過去の災害時のデータを用いた座学や現場でのデモを含む講習会を実施し、災害時に派遣する民間事業者を固定せず、経験事業者を増やす取組を行っているとされています。

ここから読める職能:平時の受注業務をこなす実務力に加え、自治体が求めるデータ要件を理解する力。協議会など業界団体の枠組みに入る姿勢。

ケース3:発災直後に現地へ入る(令和6年能登半島地震)

同ハンドブックには、エアロセンス株式会社の山形氏が輪島市における道路の被災状況確認に関わった際のコメントが収録されています。挙げられている課題は、転職希望者にとって示唆的です。

  • 緊急用務空域での飛行であったが、飛行許可を得るためにどこに連絡するかが明確に定まっていなかったこと、混乱の中でタイムリーなコミュニケーションができず、飛行するまでの調整に時間を要した
  • 自治体として確認したい場所の情報が紙ベースのみの提供であり、現地入りのルート把握に苦慮した。また現地の状況を十分に得られず、社員の安全管理に関する意思決定に時間を要した

同社担当者は、平時から災害時に自治体が求める撮影要件や成果物イメージを民間事業者に共有すること、飛行許可・調整に関する手続きを関係各所に周知してもらい、民間事業者側も必要な手続きを理解してマニュアル化しておく必要があると述べています。

ここから読める職能:操縦技術そのものより、手続きの把握・関係機関との調整・自隊の安全管理。現地で自活する段取り力。

ケース4:撮影データを行政の判断に使う(罹災証明の家屋被害認定調査)

同ハンドブックには、内閣府の参事官補佐(被害認定担当)湯浅氏と、熊本市財政局税務部税制課の村田氏のコメントも収録されています。いずれも、ドローンの撮影データを活用したリモートでの家屋被害認定調査(罹災証明発行)に関わった立場です。

熊本市の村田氏のコメントは、ドローン調査の有効範囲と限界を具体的に示しています。

  • 珠洲市では道路の寸断等により、被害認定調査で現地入りするために通常の倍以上の時間を要したり、迂回ルートの状況が良くないこともあり安全性等の課題があった
  • ドローンを活用した調査は、立ち入りが困難な地域において、全壊・半壊などの被害が大きい家屋を「ふるいにかける」という意味では非常に有効であった
  • 屋根など地上からでは確認することが難しい箇所については撮影データは非常に有効と感じた一方で、上空から見えない箇所(隣接する家屋で隠れている壁や法面側の壁)については判定が難しく、また家屋の傾斜が測定できないという課題もあった
  • 平時からドローンの撮影データやシステムの使い方に関する習熟を行っておくことで、有効な活用が進むと考える

内閣府の湯浅氏も、どこまでドローンの画像で被害の確認ができるのか、調査基準への該当をどう判断するのかといった技術面に加え、必要な応援要請をどこに行えばよいかという手続面でも参考となる前例がほとんどないため調整に時間を要したと述べ、写真の解像度・アングル・枚数について自治体側のニーズをもっと把握するべきだと感じたとコメントしています。

ここから読める職能:相手の判断基準を理解した撮影設計。「きれいに撮る」ではなく「判定に使える形で撮る」こと。

【データ】災害調査に関わる制度・支援の比較

公表資料から、関わる立場ごとの制度的な裏づけを整理します。

立場 制度・支援 内容 出典
自治体の防災部局 緊急防災・減災事業債 防災部局が整備・管理・運用するドローンのソフト・ハード両面が2024年から対象(充当率100%、交付税算定率70%)。平時は防災部局以外も活用可能 北海道ハンドブック(総務省資料を引用)
消防職員 特別交付税措置(措置率0.5) 国家資格取得経費が対象。一等無人航空機操縦士(夜間・目視外の限定変更)に限る 消防庁 令和6年12月27日事務連絡
消防団員 特別交付税措置(措置率0.5)/消防庁の支援 国家資格取得経費が対象(一等限定の注記なし)。機材購入や研修機会の提供等の支援制度あり。公務災害の対象 同上/北海道ハンドブック
消防本部の指導的立場 ドローン運用アドバイザー育成研修 福島ロボットテストフィールドで4日間。目視外・夜間飛行訓練、実災害を想定した捜索訓練等。修了者は消防庁から委嘱 消防庁「消防の動き」令和4年2月号
民間事業者 災害連携協定 緊急用務空域での飛行には手続きとして「行政機関からの依頼」が必要 北海道ハンドブック

よくある質問(FAQ)

Q. 個人の「災害調査に転職して成功した話」はなぜ見つからないのですか。

A. 災害調査が独立した職種として募集されていないためです。関わっている人は、平時は点検・測量・空撮の担当者であったり、自治体の一般行政職であったりします。そのため本人のキャリアとしては「点検会社に転職した」「自治体職員になった」という形で語られ、災害調査という切り口では表に出にくくなります。

Q. 公表事例を読むと、操縦技術はあまり重視されていないように見えます。

A. 操縦技術が不要というわけではありませんが、公表された課題の多くは手続き・調整・データ要件に関するものです。エアロセンスのコメントにある飛行許可の連絡先の不明確さ、熊本市のコメントにある撮影データの限界、内閣府のコメントにある解像度・アングル・枚数の認識差は、いずれも操縦技術とは別の能力です。この点は転職準備の方向性に影響すると考えられます。

Q. 事例に出てくる自治体の採用に応募すれば災害調査に関われますか。

A. さくら市の事例は職員からの公募によるチーム組成であり、「ドローン枠の採用」ではありません。一般行政職として採用された後に手を挙げる形です。採用区分や公募の有無は自治体ごとに異なるため、個別に確認が必要です。

Q. 大分県ドローン協議会のような団体に個人で入れますか。

A. こうした協議会は事業者を会員とする枠組みであることが多く、個人での参加可否は団体ごとに異なります。転職の観点では、協定を結んでいる事業者に所属するほうが現実的な経路だと考えられます。

Q. 能登半島地震でボランティアとして飛ばした人はいますか。

A. 北海道のハンドブックに記録されているのは、国や警察による調査、および協力民間事業者による被災状況調査や物資輸送です。緊急用務空域が指定されている場合、行政機関からの依頼等がなければ飛行できず、継続すれば航空法違反の対象になります。自己判断での飛行は避けてください。

まとめ

「ドローン災害調査の転職成功事例」が見つからないのは、需要がないからではなく、災害調査が職種ではなく「役割」として存在しているからです。公表記録から書き起こせる職能は、次の5つに整理できます。

1. 平時の業務実績……点検・測量・空撮など、災害時以外に収益を生む業務をこなせること 2. 手続きの把握とマニュアル化……飛行許可の連絡先、運航調整、依頼の受け方 3. 発注者の判断基準を理解した撮影設計……解像度・アングル・枚数。何に使われる写真かを理解する 4. 現地で自活する段取り力と安全管理の判断……ルート把握、物資、隊員の安全 5. 組織横断で動ける汎用性……専任ではなく、本務と兼ねて担うのが実態

これらはいずれも、資格取得だけでは身につきません。平時の業務の中で積むものです。災害調査を目指すなら、まず平時に何を飛ばせるようになるかを決めるのが出発点になります。

同じ構造の記事として「ドローン警備の転職成功事例」が見つからない理由|公表された導入事例から必要な職能を書き起こすも合わせてご覧ください。入口の全体像はドローン災害調査の転職先はどう比較する?「誰の権限で飛ばすか」で5タイプに分ける選び方で整理しています。

参考にした一次情報

  • 北海道経済部AI・DX推進局DX推進課「災害時ドローン活用ハンドブック」(令和7年4月)※さくら市・大分県・エアロセンス・内閣府・熊本市の各コメントは同ハンドブック収録のインタビューに基づきます
  • 総務省消防庁「消防の動き」令和4年2月号「無人航空機の災害時における活用状況等調査について」(調査時点:令和3年6月1日)
  • 総務省消防庁 事務連絡「令和7年度地方財政措置(消防庁関係)」(令和6年12月27日)
  • 国土交通省航空局「緊急用務空域の設定に関するQ&A」(令和5年11月30日時点版)

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公表記録を読むと、災害調査で評価されるのは操縦技術そのものより、平時の業務実績と段取り力だと分かります。裏を返せば、点検や測量の経験がある人は、すでに入口に近い位置にいるということです。

これまでの経歴がどの立場で評価されるかは、職務内容と地域によって変わります。災害調査に関わる企業の求人は平時の業務名で募集されていることが多いため、個人で探すと見つけにくい領域です。

著者:ドロテン運営事務局(ドローン業界特化の転職・副業紹介サービス「ドロテン」の編集チーム)

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