ドローン災害調査に資格は必要?「不要」と「一等が必須」が混在する3つの理由を制度から切り分ける

「ドローン災害調査 必要資格」で調べると、「災害時は特例で資格も許可も不要」という説明と、「一等無人航空機操縦士が必須」という説明の両方が出てきます。
結論から書きます。どちらも部分的に正しく、見ている対象が違います。
- 航空法上は、災害時の捜索・救助等について飛行許可等の規定が適用されない特例があります(ただし対象者が限定されています)
- しかしその特例は「技能の免除」ではなく「許可の免除」です
- そして実務で求められる水準は、公的機関の側が別途設定しており、消防職員については一等(夜間・目視外の限定変更)が目安として明示されています
この記事では、情報が混在する原因を3つに分けて切り分けます。
情報が混在する3つの原因
- 原因①:特例が「誰に適用されるか」が限定されていることが省略されて伝わる
- 原因②:法律が定める最低線と、発注者・任命権者が求める水準がズレている
- 原因③:平時の業務で必要な資格と、災害時に必要な資格が別のものとして存在する
順に見ていきます。
原因①:特例の対象者が限定されている
国土交通省航空局の「緊急用務空域の設定に関するQ&A」(令和5年11月30日時点版)には、航空法第132条の92が次のように引用されています。
> 第132条の85、第132条の86(第1項を除く。)及び第132条の87から第132条の89までの規定は、都道府県警察その他の国土交通省令で定める者が航空機の事故その他の事故に際し捜索、救助その他の緊急性があるものとして国土交通省令で定める目的のために行う無人航空機の飛行については、適用しない。
ポイントは「都道府県警察その他の国土交通省令で定める者」という限定です。誰でも災害時なら自由に飛ばせる、という規定ではありません。
北海道が令和7年(2025年)4月に公表した「災害時ドローン活用ハンドブック」では、民間企業が緊急用務空域で飛行させようとする場合、手続きとして「行政機関からの依頼」が必要と整理されています。つまり民間の立場では、依頼という形で公的な枠組みに入らない限り、この特例の効果を受けられません。
さらに注意が必要なのが緊急用務空域です。同Q&Aによると、令和3年6月1日以降、災害等の規模に応じて緊急用務空域が指定され、ドローン等の飛行は原則禁止になります。規制対象は100g以上の機体に限らずすべての機体で、飛行開始前の確認義務が課されます。
そして、空港周辺・150m以上・人口集中地区上空の飛行許可(包括許可を含む)を持っていても、緊急用務空域は飛行できません。 飛行中に指定された場合は速やかに中止する必要があり、関係機関から中止の指示があるかないかによらず、飛行を継続すれば航空法違反の対象になります。
「災害時は特例で不要」という説明だけを読むと、この限定と禁止が見えなくなります。
原因②:法律の最低線と、求められる水準が違う
特例は飛行許可等の規定を適用しないという内容であり、操縦技能の水準を保証するものではありません。実務で必要な技能は、組織の側が別に設定します。
ここが最も具体的に表れているのが、消防庁が令和6年12月27日に発出した事務連絡「令和7年度地方財政措置(消防庁関係)」です。「消防職員及び消防団員のドローン操縦資格の取得を通じた災害対応能力強化」という項目で、次のように整理されています。
- 令和6年能登半島地震では、道路の隆起や亀裂等による通行障害が発生したことに加え、夜間にかけて災害が発生したため、有人での対応が困難な条件下におけるドローン飛行による情報把握の必要性が再認識された
- 「輪島市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会報告書」(令和6年7月)においても、ドローンを活用した迅速な災害情報等の把握による初動対応能力の向上が必要と提言された
- 災害現場でのドローンの活用に当たっては、高度な操縦技能を有する職員・団員の育成が必要であり、そのツールとして国家資格の取得が有効
- 地方公共団体の消防職員・消防団員のドローン操縦資格(国家資格)取得に要する経費について、特別交付税措置(措置率0.5)
そして注記に、対象範囲が明記されています。
> ※消防職員は、「一等無人航空機操縦士(夜間・目視外の限定変更)」に限る
「一等が必須」という情報の出どころは、おそらくここです。 法律が一等を義務づけているわけではなく、消防職員向けの財政措置の対象がこの水準に限定されている、という話です。混同しないよう整理しておくことが重要です。
なお消防団員については、同資料の注記で対象が一等に限定されておらず、消防庁は全国の消防学校における操縦者講習の実施や、操縦技術の習得等を支援するモデル事業の実施にも取り組んでいるとしています。
原因③:平時に必要な資格と災害時に必要な資格が別
3つめの原因は、災害調査という仕事の構造そのものです。
災害調査は平時に発生し続ける業務ではありません。北海道のハンドブックが副題に「平時と災害時をまたぐシームレスなドローン活用」を掲げているとおり、平時に別の業務でドローンを飛ばしている組織が、災害時に協定や依頼に基づいて担うのが基本形です。
その結果、求人票に書かれる応募条件は「災害調査に必要な資格」ではなく、平時の業務に必要な資格になります。平時に点検をする会社なら点検の要件、測量をする会社なら測量の要件が先に来ます。
| 場面 | 根拠 | 必要なもの |
|---|---|---|
| 民間事業者が平時に特定飛行を行う | 航空法(飛行許可・承認、技能証明等) | 業務内容に応じた技能証明・許可承認 |
| 民間事業者が災害時に緊急用務空域で飛ぶ | 航空法第132条の92の特例 | 行政機関からの依頼(手続上必要) |
| 消防職員が災害対応能力を高める | 消防庁 令和7年度地方財政措置 | 一等(夜間・目視外の限定変更)※財政措置の対象範囲 |
| 消防団員が災害対応に関わる | 同上/消防庁の支援制度 | 国家資格(措置の対象。一等限定の注記なし) |
※この表は上記の各一次資料から整理したものです。個々の募集要件は組織ごとに異なります。
改善のためのチェックリスト
「自分に何の資格が必要か」を判断するには、順番に次を確認してください。
- [ ] どの立場で災害時に飛ぶのかを決める……消防・自治体の職員か、協定を結ぶ民間事業者か、消防団員か。立場によって要件が変わります
- [ ] 平時の業務内容を先に確認する……実際の応募条件は平時の業務から決まります。点検・測量・空撮のどれを担うのかを確認してください
- [ ] 夜間・目視外が必要かを確認する……能登半島地震の教訓として夜間対応の必要性が挙げられています。目指す立場が夜間対応を求めるなら、限定変更まで視野に入ります
- [ ] 緊急用務空域の確認手順を理解しておく……航空局ホームページおよびX(@mlit_mujinki)で周知されます。飛行前の確認は義務です
- [ ] 撮影要件を成果物として理解する……資格とは別に必要な能力です(後述)
よくある質問(FAQ)
Q. 無資格でも災害調査に関われますか。
A. 立場によります。公的機関の職員や消防団員として組織の枠組みの中で関わる場合、配属後に技能を身につける順序になることがあります。ただし民間事業者の場合、平時の業務で技能証明や許可・承認が必要になる場面が多く、無資格のままで担える範囲は限られると考えられます。
Q. 二等では災害調査に関われませんか。
A. 関われないとは言い切れません。消防職員向けの財政措置が一等(夜間・目視外の限定変更)に限定されているのは財政措置の対象範囲の話であり、法律上の資格要件ではありません。ただし夜間・目視外を伴う災害対応を担う立場を目指すなら、上位の技能が求められる方向にあると考えられます。
Q. 資格があれば被災地で飛ばせますか。
A. 飛ばせません。緊急用務空域が指定されている場合、包括許可を含む飛行許可を持っていても飛行できず、行政機関からの依頼等の枠組みが必要です。国土交通省航空局は、飛行中に指定された場合は速やかに飛行を中止する必要があるとしています。
Q. 資格以外に必要な能力はありますか。
A. あります。北海道のハンドブックには、能登半島地震で自治体が求める撮影データの要件が民間企業側に十分に伝わっておらず、撮影の取り直しが発生したという課題が記録されています。内閣府の担当者も、写真の解像度・アングル・枚数について自治体側のニーズをもっと把握するべきだと感じた旨をコメントしています。また熊本市の担当者は、屋根など地上から確認が難しい箇所にドローンの撮影データは非常に有効と感じた一方で、上空から見えない箇所(隣接する家屋で隠れている壁や法面側の壁)は判定が難しく、家屋の傾斜が測定できないという課題も挙げています。何をどう撮れば相手の判断に使えるかを理解していることが、実務では資格と同じくらい重要になります。
Q. 更新は必要ですか。
A. 無人航空機操縦者技能証明には有効期間があり、更新の手続きが必要です。具体的な期限や手続きは国土交通省の案内で最新のものを確認してください。
まとめ
ドローン災害調査の資格要件は、次のように切り分けると整理できます。
- 航空法上:捜索・救助等について飛行許可等の規定を適用しない特例があるが、対象者は限定されており、民間は「行政機関からの依頼」が必要
- 緊急用務空域:包括許可を含む飛行許可があっても飛行できない。飛行前の確認は義務
- 実務水準:消防職員については一等(夜間・目視外の限定変更)が財政措置の対象として明示。ただし法律上の義務ではない
- 応募条件:災害調査の実体は平時業務のため、実際の求人要件は平時の業務から決まる
「特例があるから資格は不要」という理解のまま準備を進めると、実際の採用要件とズレます。逆に「一等が必須」と思い込んで資格取得だけに時間を使うと、平時の業務実績という本来の評価軸が空白になります。まず立場を決め、その立場に必要な要件を確認するのが実務的な順番だと考えられます。
同じ構造は他の分野にもあります。ドローン警備に資格は必要?「必要」と「不要」が混在する3つの理由を航空法と警備業法から切り分けるやドローン測量に資格は必要?「必要」と「不要」が混在する3つの理由を制度から切り分けるも合わせてご覧ください。
参考にした一次情報
- 国土交通省航空局「緊急用務空域の設定に関するQ&A」(令和5年11月30日時点版)
- 総務省消防庁 事務連絡「令和7年度地方財政措置(消防庁関係)」(令和6年12月27日)
- 北海道経済部AI・DX推進局DX推進課「災害時ドローン活用ハンドブック」(令和7年4月)
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