ドローン整備士に未経験からなるには?資格がない職種で実力を証明する3ステップ

未経験からドローン整備の仕事に就くための最短ルートは、「整備の資格を取る」ではなく「整備手順書に沿って点検し、記録を残せることを示せる状態をつくる」ことです。理由は単純で、ドローン整備には航空整備士のような国家資格が存在しないため、資格の有無ではなく作業と記録の再現性で判断されるからです。
この記事では、資格がない職種でどう実力を示すかという前提に立って、未経験から整備ポジションに入るまでの具体的な手順を3ステップに分けて解説します。
なぜ「ドローン整備士のなり方」を調べても答えが出てこないのか
検索しても手順が出てこないのには、はっきりした3つの理由があります。
- 整備の国家資格がないため、「これを取れば整備士」という到達点が定義されていない。 2022年12月5日から施行されている国家資格「無人航空機操縦者技能証明」(一等・二等無人航空機操縦士)は操縦に関する技能証明であり、整備を対象にしていません(国土交通省「無人航空機操縦者技能証明等」)。
- 整備の責任が「使用者」に置かれており、職種として切り出されていない。 航空法は、機体認証を受けた無人航空機の使用者に対して、必要な整備を行って安全基準への適合を維持する義務を課しています。会社によっては操縦者が整備を兼務しており、整備専任の求人として表に出てこないケースがあります。
- 求人名称が統一されていない。 「ドローン整備」「メンテナンススタッフ」「サービスエンジニア」「カスタマーエンジニア」「品質保証」など呼び名が分かれており、検索ワードが一致しないだけで見つからないことが起きます。
つまり「なり方が分からない」のは情報不足ではなく、職種の定義が制度上あいまいなまま市場が立ち上がっているためです。ここを理解すると、やるべきことが逆に絞れます。
ドローン整備の仕事に就く3ステップ
ステップ1:制度上の「整備」の中身を先に押さえる(1〜2週間)
最初にやるのは機体を買うことでも資格講座に申し込むことでもなく、法令が整備に何を要求しているかを把握することです。ここを押さえていない応募者は、面談で「点検整備記録」という言葉が出た瞬間に会話が止まります。
押さえるべきは次の3点です。
1. 機体認証と型式認証の区別:機体認証は個別機体の安全性を検査する制度で、第一種機体認証は国土交通省が検査して有効期間1年、第二種機体認証は登録検査機関が検査して有効期間3年とされています(国土交通省 無人航空機レベル4飛行ポータルサイト「機体認証」)。第二種機体認証の検査は、日本海事協会(ClassNK)のような登録検査機関が担っています。 2. 整備手順書の位置づけ:型式認証を取得した機体では、「整備手順書に従った点検整備や機体メーカーが指定する部品交換以外の作業を実施した場合、機体認証申請時は型式認証未取得の機体として取り扱う」とされています(国土交通省「機体認証等」)。整備は自由な修理ではなく、手順書に縛られた作業だという点が核心です。 3. 飛行日誌の3点セット:特定飛行を行う場合、飛行日誌(飛行記録・日常点検記録・点検整備記録)の作成・携行・保管が義務づけられています(国土交通省「飛行計画の通報・飛行日誌の作成」)。整備職の成果物はこの記録に残ります。
この3点は無料で読めます。費用ゼロで差がつく唯一のステップなので、ここを飛ばさないでください。
ステップ2:二等無人航空機操縦士の取得を「整備のため」に位置づける(1〜3か月)
整備職に操縦資格は必須ではありません。それでも取得を勧める理由は、整備の完了確認に飛行が伴うからです。
航空法は、飛行させる者に対して「飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させること」を遵守事項として定めています。整備後の動作確認やテストフライトは、この飛行前確認と地続きです。操縦資格を持つ整備担当は、整備から確認飛行までを一人で完結できるため、小規模な事業者ほど重宝されます。
取得手順そのものは操縦職と同じで、登録講習機関での講習受講と、学科試験・実地試験・身体検査の合格が必要です。詳しい流れはドローン操縦士になるには何から始める?資格取得から仕事に就くまでの3ステップにまとめています。
ここで重要なのは、履歴書での書き方です。 「二等を取得しました」だけでは操縦職の応募者と差がつきません。「整備後の動作確認とテストフライトを自分で完結させるために取得した」と目的を明示すると、整備ポジションへの志望として筋が通ります。
ステップ3:応募先を5タイプに分けて、記録運用に触れられる職場を選ぶ(並行して進める)
ステップ2の資格取得を待たずに、応募先の整理は並行して始めてください。ドローン整備に関わる仕事は、整備対象で次の5タイプに分かれます。
1. 修理受付・リペア専業(修理センター型) 2. 販売代理店・ソリューション事業者の整備部門 3. 運航事業者の社内整備・機体管理 4. メーカー・機体開発企業の品質保証/サービスエンジニア 5. 農業ドローンの販売・整備事業所
未経験から入りやすいのは①②⑤の傾向があると考えられます。各タイプの比較はドローン整備士の求人はどう比較する?「誰の機体を整備するか」で5タイプに分けて選ぶ基準で詳しく整理しています。
選ぶ基準はひとつで、点検整備記録の運用に触れられるかです。修理スキルは機種が変われば価値が落ちますが、手順書に沿った点検と記録の運用経験は機体が変わっても持ち運べます。
【比較表】未経験者が取り得る3つの準備方法
| 準備方法 | 期間の目安 | 費用の目安 | 得られるもの | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 法令・制度の独学(ステップ1) | 1〜2週間 | 無料 | 面談で会話が成立する前提知識 | 独学だけでは応募の決め手にならない |
| 二等無人航空機操縦士の取得 | 1〜3か月 | 講習機関により異なる | 整備後の確認飛行を自力で完結できる | 整備職では必須要件ではない |
| メーカー・協会系の講習受講 | 数日〜 | 主催団体により異なる | 特定機種・特定分野の整備知識 | 汎用性は機種依存になりやすい |
※費用・期間は講習機関や主催団体によって異なります。申込前に必ず公式情報で確認してください。
未経験・独学で不安な場合の選択肢
選択肢A:隣接職種から入って社内で整備に寄せる
運航事業者に操縦者・オペレーターとして入り、日常点検と日常点検記録の担当を引き受けながら整備へ寄っていく進み方です。特定飛行では日常点検が飛行前に必須なので、整備の入口業務は操縦職の日常業務の中に最初から含まれています。整備専任求人が見つからない地域では、現実的なルートになり得ます。
選択肢B:農業ドローン分野で認定と整備を同時に押さえる
農業分野では、農林水産航空協会の認定機を使用するために「産業用マルチローターオペレーター技能認定」の取得が求められ、教習施設と整備事業所を併設する体制が取られています。認定取得と整備実務の距離が近いため、未経験から整備に触れる機会をつくりやすい領域です。散布シーズン前に点検需要が集中する季節性がある点は理解しておいてください。
選択肢C:現職の「機械を手順書どおり整備し記録を残した経験」を棚卸しする
自動車整備、設備保全、電気工事、製造ラインの保守、医療機器の点検など、手順書に沿って点検し記録を残す仕事は制度上の構造がドローン整備と同じです。ドローン整備に固有の国家資格がない以上、この経験は代替的な裏付けとして機能し得ます。「触ったことがない」ではなく「別の機械で同じことをしていた」と翻訳して伝えてください。
異業種からの転身の進み方はドローン業界へのキャリアチェンジはどう進むのか|異業種から転身する人が共通して踏む4つのステップも参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 「ドローン整備士」という民間資格はありますか?
創設が発表された経緯はありますが、現在の実施状況は公式サイトで確認できませんでした。 一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)は2017年10月に「ドローン整備士2級」と「ドローン車検(安全整備検査)スタンダード」の創設を発表しています。ただし2026年9月時点でDPAの資格認定事業ページに掲載されているのは操縦士回転翼のスペシャリスト・エキスパート・インストラクターの3種で、整備士資格の掲載は確認できませんでした。受講を検討する場合は、主催団体に現在の実施状況を直接確認してください。
Q. 電気やはんだ付けの経験がないと厳しいですか?
タイプによります。 基板レベルの修理を行う修理センター型では電子工作の素養が効きますが、販売代理店の定期点検や農業ドローンの消耗品交換では、手順書どおりに作業して記録を残す正確さが優先されます。「細かい作業を手順どおり外さずやり切れるか」が共通の評価軸と考えられます。
Q. 機体を自分で買って練習する必要はありますか?
必須ではないと考えられます。 個人で買える機体と業務用機は構造も整備手順も異なり、自己流の分解は型式認証機では手順書外の作業に該当し得ます。自費で機体を買うより、ステップ1の制度理解と二等資格の取得に予算を回したほうが応募時の説明力は上がります。
Q. 年齢が高くても整備からの転職は可能ですか?
保有している整備経験の内容次第と考えられます。 整備職では手順遵守と記録の正確さが重視されるため、他分野で保守・点検を長く担ってきた経験が評価される余地があります。年齢に関する法律上の扱いはドローン業界の転職に年齢制限はある?何歳までかを法律と実態の両面から解説で解説しています。
Q. どのくらいの期間で転職できますか?
一律の目安は示せません。 ステップ1は1〜2週間、二等資格の取得は講習機関の日程次第で1〜3か月が目安ですが、整備専任の募集が出るタイミングは地域と分野に左右されます。資格取得の完了を待ってから応募を始めると機会を逃しやすいため、ステップ3の応募先整理は並行して進めてください。
まとめ
未経験からドローン整備の仕事に就く道筋は、資格取得ではなく制度理解から始まります。
- ドローン整備に国家資格はなく、制度上の要は整備手順書どおりの作業と点検整備記録
- ステップ1(制度理解・無料)→ ステップ2(二等資格を整備目的で取得)→ ステップ3(記録運用に触れられる職場を選ぶ)
- 自動車整備・設備保全など、手順書に沿って点検し記録を残した経験は翻訳すれば通用する
まずはステップ1の3点(機体認証と型式認証の区別/整備手順書の位置づけ/飛行日誌の3点セット)を押さえてください。これだけで面談での会話の質が変わります。
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この記事の執筆者 ドロテン運営事務局(ドローン業界特化の転職・副業紹介サービス「ドロテン」の編集チーム)
参考・出典

